【前回のあらすじ】
クラスター発生の混乱の中、新人介護士あかりは、先輩・小島が利用者さんの発熱を意図的に隠蔽していたことを、勇気を振り絞って報告した。小島さんは山田に厳しく叱責され、あかりは山田から「あかり」と名前で呼ばれる。そして、山田から介護士の登竜門である夜勤を任され、あかりの新たな試練が幕を開けた。
悪意の申し送り:夜勤への罠
山田の付き添い指導を受け、数回の指導を経て、初めての独り立ち夜勤を迎えることになった。山田は厳しくも「夜勤は観察眼と判断力。怖がらず、手順を守って」と、あかりを信頼している様子だった。
夕方の引継ぎ時。申し送りの担当は、前回あかりにミスを報告されて以来、恨みを募らせている小島だった。
「おっ、新人ちゃんが夜勤か。まあ、頑張ってね」 小島さんは露骨に嫌な顔をしながら、申し送りを驚くほど手短に済ませた。
「田中さんの眠剤は、前回と変わらず〇〇。時間もいつもの21時でよろしく。あ、そうそう、今日から『錠剤』から『粉薬』に変わったらしいから。面倒だけど、混ぜて飲ませてあげて」 小島さんはそう早口に告げると、あかりが疑問を挟む間も与えずに、すぐにフロアから姿を消した。
(え? 粉薬に変わった?聞いてないけど……) あかりはすぐに薬の記録を確認しようとしたが、その直後、他の利用者さんの緊急コールが鳴ってしまい、対応に追われた。 (まあ、小島さんが言ってたんだから大丈夫よね。記録は後でしっかり確認しなきゃ……) あかりは、小島さんの言葉を鵜呑みにしてしまうという、新人特有の「先輩への信頼」という致命的なミスを犯してしまった。
誤薬発生!日頃の態度が反映されたオンコール
静寂に包まれた夜のフロア。21時。あかりは田中さんの部屋へ向かい、小島さんの指示通り、薬を砕いて飲ませた。
しかし、深夜2時の巡回時。田中さんの部屋に入ったあかりは、すぐに異変に気づいた。田中さんの呼吸が浅く、顔色は青白い。声をかけても、反応が鈍い。 (おかしい!こんなに意識が沈んでいるのは初めてだ!)
あかりはパニックになりかけたが、山田の「手順を守って」という言葉を思い出し、冷静に脈拍と呼吸をチェックした。そして、すぐにオンコール(夜間待機している看護師への電話連絡)を決意した。
電話口に出たのは、オンコール担当の斎藤文子看護師だった。

「夜勤の介護士、あかりです。田中様が意識レベル低下と呼吸浅迫で急変されました。今朝の記録、熱は……」 あかりは必死に状況を伝えた。
「ちょっと待ちなさい!意識レベル低下ですって?大袈裟よ。大体、急変なんて滅多にないのよ。あんた、何か変なことしたんじゃないでしょうね!?」 斎藤看護師は、あかりの報告の途中にもかかわらず、高圧的な態度で責め立てた。
あかりは、震える声で田中さんの状態を説明し、今朝の申し送りで薬が錠剤から粉薬に変わったと伝えた。
「はあ? 粉薬? 何を言ってるの。田中さんの薬は特別な錠剤で、絶対に砕いちゃいけない薬よ!あんた、誤薬したんじゃないの!」
斎藤看護師の言葉に、あかりの目の前は真っ白になった。砕いてはいけない薬を、小島さんの指示通りに粉にして飲ませてしまったのだ。
「すぐに施設へ向かうわ。それまで田中様から目を離さないで!あんた、本当に何やってくれてるの!」 斎藤看護師は、介護士を見下すような冷たい口調で言い放ち、電話を切った。あかりの心には、誤薬の恐怖と、看護師から突き放されたような孤独感が深く突き刺さった。
夜勤明けの激怒と崩壊した信頼
斎藤看護師が到着し、処置が行われ、田中さんは一命を取り留めた。砕薬による作用の急激な発現が原因だった。
夜勤明け。あかりは憔悴しきった顔で山田に呼び出された。 「あかり。あんた、何をやったか分かっているわよね?」 山田の顔は、これまでにないほど厳しかった。
「申し訳ありません……小島さんの申し送り通りに、薬を…」 あかりは、震えながら言葉を絞り出す。
「小島さんの申し送り? あなたはプロの介護士として、薬の変更があれば、必ず薬の記録で確認するという基本中の基本を怠った。小島さんを信じた? そんなのは通用しないわ! 薬は命綱よ!」
山田の怒鳴り声は、あかりの心を粉々に打ち砕いた。クラスター対応で築き上げた信頼関係は、一瞬にして崩壊した。
山田の調査と小島の真実
数日後。誤薬の原因究明は徹底的に行われ、小島さんの虚偽の申し送りはすぐに山田の知るところとなった。小島さんは「勘違いした」と主張していたが、前回の情報隠蔽の件で不信感を抱いていた山田は、小島さんの悪意を確信していた。
その日の業務後、山田はあかりを再び呼び出した。 「あかり。誤薬の原因は、小島君があなたに意図的に間違った情報を伝えたからよ。それは私が責任を持って対処するわ。小島君には厳重に注意する」
しかし、山田の表情はまだ厳しい。 「だが、あかり。あんたにも反省してもらわなきゃいけない。小島君の悪意は許されないけど、申し送りだけを信じ、記録を確認しなかったあんたにも責任がある。自分の仕事は、自分の目で確認しなさい。これがプロよ」
山田の言葉は、厳しさの中に、あかりをプロとして育てたいという強い思いが感じられた。
冷たい看護師と次なる戦い
誤薬の原因は、小島さんの悪意によるものだと分かった。しかし、あかりの心に深く残ったのは、オンコール時の斎藤看護師の冷たい声だった。
斎藤看護師は、今回の誤薬を重ね、「あかりは仕事ができない、危険な介護士」という印象を決定づけている。職場では、斎藤看護師の冷たい視線と、小島さんが根回しした職場の空気が、あかりを追い詰めていく。
(介護士を、まるで人間扱いしないあの態度は何なんだろう…)
あかりの新たな戦いは、職場の人間関係、看護師との壁へと向かう。
【あかりの奮闘記】過去のお話
・第一話 始まりの春
・第二話 新人いびり
・第三話 入浴介助の危険性
・第四話 コロナの恐怖
・第五話 小島の隠蔽

🟢 主人公
中村 あかり(なかむら あかり)

- 18歳・高校卒業したての新人介護士明るく素直で笑顔が魅力。
- 少し不器用だけど「人の役に立ちたい」という気持ちは人一倍強い
- 祖母の影響で介護の道に進む
🟣 先輩職員
山田 典子(やまだ のりこ)

- 40代前半、ベテラン介護士
- 職場では親分肌だが、新人に厳しい態度をとる
斎藤 文子(さいとう ふみこ)

- 総合病院の急性期病棟で長年勤務し、看護主任クラスの経験を持つ。体力の限界から介護施設へ転職したが、医療行為ができない介護士との役割の違いに強い葛藤と責任感を抱えている。
小島 健太(こじま けんた)

- 30代半ば、山田の右腕的存在
- 山田に従って新人いびりをする
伊藤 ゆい

- あかりの理解者であり、心の支え あかりと同じく高校を卒業したばかりで、新人ならではの失敗や不安を共有できる唯一の存在
🔵 上司
佐藤 誠一(さとう せいいち)
- 50代、施設の管理者
- 現場の問題にはあまり首を突っ込まないタイプ

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新人介護士あかりの奮闘記はまだ始まったばかり! あかりと同期の伊藤ゆいとの出会いや、厳しい先輩・山田典子の意外な一面など、これまでの物語もぜひチェックしてみてください。
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