新型コロナ禍で家族が帰省したことを理由に訪問介護サービスを中止した結果、介護事業者に慰謝料55万円の支払い命令が下されました。本記事では判決内容を解説し、口コミ・炎上リスクから介護事業者が身を守るための3つの鉄則を紹介します。
目次
- 事件の概要|訪問介護サービス打ち切りと裁判の経緯
- 高裁判決のポイント|なぜ慰謝料が増額されたのか
- 介護現場に潜む「炎上リスク」とは
- 口コミ・風評被害を防ぐための3つの鉄則
4-1. 柔軟な対応とリスクマネジメント
4-2. 利用者・家族との丁寧な情報共有
4-3. 職員への教育と危機管理体制の整備 - 今回の判決から学べること
- 関連記事の紹介
- まとめとオープンチャットのご案内
1. 事件の概要|訪問介護サービス打ち切りと裁判の経緯
2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期。山口県岩国市に住む高齢女性は、地域の医療法人と契約し、調理や掃除などの訪問介護サービスを週3回受けていました。
ところが、ある出来事をきっかけに状況が一変します。
女性の家族が東京から帰省したことを理由に、介護事業者は「感染リスクがある」と判断し、6月から10月の間に合計7日間、サービスの提供を停止したのです。
一人暮らしの女性にとって、これは大きな打撃でした。生活の基盤を支えていたサービスが突然途絶え、不安と孤独に直面せざるを得ませんでした。その結果、女性は介護事業者を相手取り「契約違反だ」として慰謝料を求める訴訟を起こしました。

2. 高裁判決のポイント|なぜ慰謝料が増額されたのか
1審では「訪問介護を一方的に打ち切ったのは違法」として、33万円の支払い命令が下されました。
しかし控訴審である広島高裁は、さらに踏み込みました。
裁判長は、事業者側が「感染状況や国の方針に応じて柔軟に対応する姿勢を欠いていた」と指摘。状況は日々変化していたにもかかわらず、利用者の生活や契約上の義務を軽視して一方的に中止した点を重く見たのです。
その結果、慰謝料は 33万円から55万円に増額。
金額そのものは巨額ではありませんが、介護事業者にとっては「利用者の生活権を守らなければならない」という強いメッセージを突きつけられた判決といえます。
3. 介護現場に潜む「炎上リスク」とは
介護事業は、常に利用者やその家族と密接に関わります。信頼関係を基盤に成り立っているからこそ、一度トラブルが起これば「口コミ」や「ネットの声」が一気に拡散され、事業全体にダメージを与えかねません。
今回のケースも、万が一ネット上で「コロナを理由に介護を拒否された」と拡散されれば、事業所の信用は大きく揺らいだでしょう。SNS全盛の今、「1人の不満」が「施設全体の評判」に直結する時代です。
こうした炎上リスクを防ぐためには、単なる法令遵守だけでは不十分です。利用者・家族・職員すべてが安心できる仕組みづくりが必要になります。

4. 口コミ・風評被害を防ぐための3つの鉄則
4-1. 柔軟な対応とリスクマネジメント
コロナ禍のように、状況が刻一刻と変化する中で「マニュアル通り」では限界があります。
大切なのは、国や自治体の指針に合わせて柔軟に対応しつつ、利用者の生活を止めない工夫をすること。
例えば、感染が不安なら「訪問回数を減らす」「換気や防護具を徹底する」といった代替案を検討すべきでした。
4-2. 利用者・家族との丁寧な情報共有
突然の中止は「見捨てられた」という印象を与えてしまいます。
リスクがあるなら、その根拠や理由を丁寧に説明し、可能な代替手段を提示することが信頼維持につながります。
「一方的に止める」のではなく、「一緒に乗り越える」姿勢が大切です。
4-3. 職員への教育と危機管理体制の整備
介護職員一人ひとりが正しい判断をできるよう、日頃から研修やシミュレーションを行うことも重要です。
特に「SNS時代の危機管理」は欠かせません。
些細な行動が写真や投稿で拡散され、施設の信頼を損なうケースも後を絶ちません。

5. 今回の判決から学べること
この判決は、介護事業者にとって大きな警鐘となりました。
「感染防止」を大義名分にしても、利用者の権利や契約上の義務を軽視すれば、裁判所は厳しく判断するということです。
一方で、事業者もまた「職員や利用者を守る責任」を背負っています。
だからこそ、バランス感覚と危機管理能力が求められます。
今回の事例を教訓に、「柔軟な対応」「誠実な説明」「体制づくり」を徹底することで、炎上や訴訟リスクを回避できるでしょう。
6. 関連記事の紹介
7. まとめとオープンチャットのご案内
介護の現場は、時に予期せぬトラブルに直面します。
大切なのは「一人で抱え込まないこと」。
もしあなたが同じような不安や課題を感じているなら、ぜひ仲間と情報交換してみてください。
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