「ちょっと新人! そっちの車椅子押してよ!」
耳に飛び込んできた鋭い声に、私は思わず背筋を伸ばした。
まだ制服も着慣れていないのに、もう“戦場”に放り込まれたような気分だ。
目の前では、廊下いっぱいに広がった車椅子の列。入所者さんたちを食堂に移動させる真っ最中らしい。
けれど私は、どう押せばいいのか分からず、立ち尽くすばかり。
隣で腕を組んでいる女性職員がギロリと私をにらんだ。――たぶん、あの人が山田さん。
後ろからは小柄な男性職員が「早くしなよ、新人ちゃん」と笑っている。これが小島さんか。
……出勤初日から、いきなり洗礼を浴びた。
――あ、自己紹介がまだだった。

私は あかり。18歳。高校を卒業したばかりで、介護士としての第一歩を踏み出した新人だ。
就職先は「特別養護老人ホーム・笑顔の花」。名前だけ聞けば、優しい雰囲気に包まれた施設を想像するだろう。
でも、現実は――うん、かなり手強そうだ。
それでも私の胸の奥には、祖母からもらった「人の役に立てる人になりなさい」という言葉が光っている。
失敗したって、怒られたって、泣いたって。
――ここで頑張ってみせる。
🟢 主人公
中村 あかり(なかむら あかり)

- 18歳・高校卒業したての新人介護士明るく素直で笑顔が魅力。
- 少し不器用だけど「人の役に立ちたい」という気持ちは人一倍強い
- 祖母の影響で介護の道に進む
🟣 先輩職員
山田 典子(やまだ のりこ)

- 40代前半、ベテラン介護士
- 職場では親分肌だが、新人に厳しい態度をとる
小島 健太(こじま けんた)

- 30代半ば、山田の右腕的存在
- 山田に従って新人いびりをする
🔵 上司
佐藤 誠一(さとう せいいち)
- 50代、施設の管理者
- 現場の問題にはあまり首を突っ込まないタイプ