『連続小説・泣いて笑って、新人介護士あかりの成長期』①

介護小説

 「ちょっと新人! そっちの車椅子押してよ!」

 耳に飛び込んできた鋭い声に、私は思わず背筋を伸ばした。
 まだ制服も着慣れていないのに、もう“戦場”に放り込まれたような気分だ。
 目の前では、廊下いっぱいに広がった車椅子の列。入所者さんたちを食堂に移動させる真っ最中らしい。

 けれど私は、どう押せばいいのか分からず、立ち尽くすばかり。
 隣で腕を組んでいる女性職員がギロリと私をにらんだ。――たぶん、あの人が山田さん。
 後ろからは小柄な男性職員が「早くしなよ、新人ちゃん」と笑っている。これが小島さんか。
 ……出勤初日から、いきなり洗礼を浴びた。

 ――あ、自己紹介がまだだった。


 私は あかり。18歳。高校を卒業したばかりで、介護士としての第一歩を踏み出した新人だ。
 就職先は「特別養護老人ホーム・笑顔の花」。名前だけ聞けば、優しい雰囲気に包まれた施設を想像するだろう。
 でも、現実は――うん、かなり手強そうだ。

 それでも私の胸の奥には、祖母からもらった「人の役に立てる人になりなさい」という言葉が光っている。
 失敗したって、怒られたって、泣いたって。
 ――ここで頑張ってみせる

🟢 主人公

中村 あかり(なかむら あかり)

  • 18歳・高校卒業したての新人介護士明るく素直で笑顔が魅力。
  • 少し不器用だけど「人の役に立ちたい」という気持ちは人一倍強い
  • 祖母の影響で介護の道に進む

🟣 先輩職員

山田 典子(やまだ のりこ)

  • 40代前半、ベテラン介護士
  • 職場では親分肌だが、新人に厳しい態度をとる

小島 健太(こじま けんた)

  • 30代半ば、山田の右腕的存在
  • 山田に従って新人いびりをする

🔵 上司

佐藤 誠一(さとう せいいち)

  • 50代、施設の管理者
  • 現場の問題にはあまり首を突っ込まないタイプ
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